【アーティスト紹介】Moscow Youth Cult

 紹介といっても、アルバムとミニアルバムをデジタル購入しただけで、なにかとりたてて知識があるわけではないのだが、無名のままにしておくには惜しい音楽アーティスト Moscow Youth Cult(以下、MYC)をミュージック・ビデオとともに紹介。


Survivasm

 “Survivasm”は、ゲーム『Saints Row 4』(2013)の傑作ミッション、"Girls Night Out"(夜遊びの女たち)で、シミュレーション空間を疾走する際に流れる浮遊感と疾走感とがあふれる楽曲。私はゲームで聴いてたどり着いたこのビデオにまた惚れ込み、収録のファースト・アルバム Happiness Machines を Amazon で購入した(なお、アルバム・タイトルは、BBCのドキュメンタリー・シリーズ『自我の世紀』The Century of the Self の第一話タイトルに由来する、とのこと)。
 ミュージック・ビデオは、映画『エクストロ』(XTRO, 1983)からのサンプリング。私は長年見たいと思いながらあいにく未見なのだが、「こういう映画が映画の評判を悪くしているのだ」と故ロジャー・イーバートを憤慨させるも、その貪欲な最低っぷりがビデオ・マニアのあいだでカルト的人気を呼んできたことで有名なB級SFホラーである(最低映画館による紹介予告編)。


Iris

 ダリオ・アルジェントのホラー映画を思わせるストーリーのアニメーション。同じく Happiness Machines に収録。

 そして、未発売のセカンド・アルバム Brutalist 収録予定から続けて二曲。いずれも2分過ぎるあたりからの展開が素晴らしい。


Lux


Dream Console

 レコード会社の紹介文デビュー時のビデオ・インタビューによると、MYC は、英ノッティンガムを拠点に2011年から活動している男性二人組。彼らは、自分たちの音楽を“VHS pop”と呼んだりしている(Soundcloud では、他に synthwave、darkwave、electronica といったタグ付けがされている)。
 “VHS pop”という名称を検索すると、Wikipedia などでは、vaporwave(ヴェイパーウェイブ)のサブジャンルとして記載されているが、言葉の出所がMYCかは不明。同時多発的に出回り始めた名称だろうか?(【2017/01/21更新】久しぶりに見てみると、“VHS pop”の記載がなくなっていた。)
 ジャンル名をめぐる宗派的問答はさておき、肝心なことは、彼らが自分たちの音楽を、レンタルビデオやビデオゲームといった彼らの少年時代を彩った文化的記憶に触発されたものとして考えている、ということだろう。上の紹介文にも次のようにある。「彼らはインスピレーションの多くを、私たちの世代がおそらく最後の目撃者となる、デジタルとアナログとの過渡期への彼ら自身のノスタルジアから引き出している。」

 そういうわけで、過ぎ去った80年代・90年代の記憶から生み出される彼らの未来へのノスタルジーになにか共鳴するところがある人にぜひオススメのアーティストである。